アストロ・ボールを今更ながら読んだ
球場の話ではないのですが、読んだので自分のメモも兼ねて。
マネーボールがセイバーメトリクスを活用した球団経営の礎となる話、ビッグデータベースボールがデータを活用してチームを強化する話だとすると、アストロボールはその発展のような話になるのかなと。
マネーボールの球界への浸透、スタットキャストが全球場に導入されることで、球団毎に得られるデータの質や量に差は出なくなってきた。
その中でルーノウGMが着目したのは「直感」や「リーダーシップ」といったデータで数値化できない情報の活用だった。
実際に、カルロス・ベルトランは数字上のデータでは非常に寂しい成績に終わり、2017年を持って引退するのだが、チームを一体化させる、チームの士気が下がっている適切なタイミングで鼓舞するなど、その貢献度は非常に大きかったよう。
また、ルーノウたちは数値化できない情報を無視するのではなくしっかりと取り入れ、これらのデータを数値化しようと取り組んでいるところも面白い。
JDマルティネスの放出や、エイケンの未契約など、チームとして失敗したこともきちんと描かれており、その反省を活かしてチームをより良いものへしようとする仕組みづくりがきちんとできていたようだ。
フライボール革命や守備シフトは野球をハイレベルにさせる要因の一つとなっているが、結局は人間がプレイするゲームであり、その魅力に気づかせてくれるような一冊だった。
さて、上述したカルロスベルトランについては1章丸ごと割いて描かれていた。
2017年のアストロズにとって、彼の存在なくては優勝できなかったであろう。
それだけに、彼が主導してサイン盗みをしていたことは非常に残念に感じてしまう。
本書では(あのような出来事があったので、信用していいのかわからないが)ベルトランは投手の癖を盗むのが非常にうまく、チームメイトとその情報を共有していたそう。
チームが勝つためには何をすべきか、常に考えている彼だからこそ、サイン盗みにまで至ってしまったのだろうか。
とにもかくにも、野球の読み物としても面白いし、データ分析や組織論にも活用できるようなことも書かれているので、読んでみてもらいたい。